“歌う不動産王”千昌夫さんとのニヤッとする思い出
別に私生活を暴くようなスキャンダラスな本ではない。それなのに出版直前になって千さんは私に、5人の弁護士連名で、出版をしたら裁判も辞さないという抗議文書を送ってきた。
この情報をキャッチした芸能リポーターの故・梨元勝さんが、「恐縮です!」と言って、テレビのワイドショーで報道したことが宣伝になって、著書は出版からわずか1カ月で16刷りを重ねた。
あの出版差し止め騒動から十数年が経過して、池袋の仕事場に、長野県内のホテルから1通の手紙が届いた。年末のイベントで、「千昌夫ディナーショー」を開催するからどうぞ、という案内状である。送り主は、親しくしていたホテルの元経営者で、むげに断ることもできない。友人を誘って2万円のショーに出席した。会場は300人ほどの地元住民でほぼ満席。丸テーブルにフランス料理風の食事が用意され、千昌夫さんの歌が始まった。
でも、あれだけの有名演歌歌手なのに、舞台に演奏者が1人もいない。
知人が私の耳元で、「ショーに演奏者を招いたら費用がかさむ。カラオケスタイルにしたのでしょう」と、解説してくれた。