岸田首相は“雑誌の底力”を甘く見ていた 田中角栄も宇野宗佑も安倍晋三も射止めているのだ
参院選で自民党が惨敗するきっかけに
この2人ほど大物ではないが、有権者に強い印象を与えたスクープがあった。週刊現代(2007年7月21日号)で松田賢弥記者が報じた「赤城徳彦農水相の架空事務所費問題」である。後援会事務所を実家にして年間300万円以上を事務所費として計上していた。
だが、松田記者が赤城の実家を訪ね、母親に聞くと、「家賃なんて取ったことも、もらったこともありません」とすべてを否定した。
釈明会見に出てきた赤城は、額と頬に巨大なガーゼとバンソウコウを貼った印象的な姿で現れ、世間の失笑をおおいに買った。
まだある。ジャーナリストの岩瀬達哉が同じく週刊現代で連載した「年金問題」と相まって、安倍晋三政権に対する批判は高まり、2007年7月に行われた参院選で自民党は惨敗。その後、持病の悪化を理由に、安倍は突然辞任してしまったのである。
先人たちの失敗に学ばず、雑誌の底力を甘く見ていた岸田首相、後の祭りである。(文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「週刊フライデー」元編集長)