特撮映画が邦画を救う! “オトナが見る「仮面ライダー」”が秘める日本映画の新たな可能性
昨秋からアマゾンプライムで配信開始されて話題なのが「仮面ライダーBLACK SUN」。これは仮面ライダー生誕50周年企画の一つで、1987年放送の「仮面ライダーBLACK」を白石和彌監督がリブートしたもの。怪人たちの頂点に立つ「創世王」の後継者を巡る争いに南光太郎(西島秀俊=51)と秋月信彦(中村倫也=35)が巻き込まれていく物語である。
人間と怪人が共存する社会を舞台に、怪人差別がはびこる現状を生きる、2人の思いと未来が交錯する。“大人が見る「仮面ライダー」”を目指した白石監督は、現代と怪人たちが現れた50年前をドラマで描き、50年前の1972年の部分では、当時の学生運動を人間と怪人の対立をテーマに描いていて、言ってみればこれは怪人が存在するパラレルワールドの現代日本史。
白石監督作品としては、東京五輪が開催されず、経済が落ち込んだ日本が舞台の「麻雀放浪記2020」(2019年)に通じるパラレル現代史ものでもある。
第1話と第2話を見た印象で言えば、光太郎がBLACK SUNに変身する場面や、怪人と戦うときのスピード感は今のVFXならではの表現になっているが、ちまたにあふれる怪人たちのマスクやメークを含め、全体的な見せ方は手作り感覚の特撮ものの味わいが強い。CGはあり得ない動きとキャラクター造形を可能にしたが、あえてそちらを選ばず、人間が実際に出来るアクションや手作りの味を出して、CGがそれを補填している感じがある。