追悼・坂本龍一さん 新宿高校で同級生、50年来の親友が明かすラストメッセージと原点
“女にもてなきゃ音楽やってる意味ないだろ”
互いに20代の頃にはこんなこともあったという。
「女癖が悪いと坂本を叱ったこともありました。そしたら“女にもてなきゃ音楽やってる意味ないだろ”と坂本流の暴言を吐いて絶交したこともありましたね。でもこれは表現行為というものは誰かに好かれなければ、人の共感を得る、キズナを結ぶことなんてできないという彼流の言い回し。今となってはしみじみそう思います」
大人になってから環境や社会問題についても話したが、ほとんどバカ話ばかり。
「坂本からは17歳の時に“ヘーゲルを読まなきゃダメだよ”と言われて真に受けて読んだけどぜんぜんチンプンカンプン。コンプレックスばかり植え付けられたものです。でも大人になってからは高尚な付き合いじゃないし、そんな話は一切なし。音楽の話もしません。読んだ本の話とか、あの女優キレイだねえとか。で、バッカじゃねーのって(笑)。ただ、この1年は体がしんどいとチャットで漏らしていました」
■新宿高校校長室占拠の真相
がんを患い、外出がままならなくなった坂本さんとはメールやチャットで言葉を交わし続けたという。
「最後に長めのやりとりをしたのは去年の秋、10月くらいだったかな。急に“新宿高校の6項目要求ってなんだっけ?”って来てね。高校生全共闘だった僕が草案して、校長室を占拠したときに要求したもので、制服を着るのは自由な個人の選択、受験偏重教育の是正、成績の張り出しの見直しなどを掲げたんです。でも、いざ校長室に突入したら坂本がいない(笑)。退学なら一蓮托生なんて言ってたのに、“母親が起こしてくれなかった”って遅刻してきましたね(笑)。でもなんで70歳にもなって今更とも思ったけど、自分の歩んだ足跡を振り返っていたのかもしれませんね」
「世間は彼の本当の弱さと優しさを知らないのです。最後まで青くさかったし面白い男でしたよ。残念です。そう、僕のために一曲書くという約束は果たさぬまま逝ってしまいました」
(取材・文=米田龍也/日刊ゲンダイ)