著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

NHK、旧ジャニタレ起用再開のサスガ!「われわれは疑惑の風化に麻痺しすぎ、無自覚すぎではないか」

公開日: 更新日:

「補償=救済ではなく、“補償”と“救済”」

 今月9日、ジャニー喜多川氏からの性被害を訴えてきた志賀泰伸さん、長渡康二さん、中村一也さんが日本記者クラブで会見を開いた。旧ジャニーズ事務所が性加害を認めて1年後の思いを語るとともに、スマイル社に対して被害の全容解明と誹謗中傷対策の徹底を求める会見。ぼくは同クラブのYouTube公式チャンネルで観たが、登壇したお三方のひどく憔悴して悲痛な様子に胸苦しさを覚え、最後まで見届けるには一時停止を何度かくり返さなければならなかった。

 1年前に比べればたしかに補償は進んでいるのかもしれない。だが補償は補償、それだけで被害者が救済されたことにはならないと痛感した。この日は登壇しなかったが、これまで勇気ある告発を重ねてきた飯田恭平さんがご自身の公式Xに記した「補償=救済ではなく、“補償”と“救済”です」という意味が初めてリアルに理解できた気がする。

 中村さんは「タレントさんにこの問題について発言を強要するつもりはありませんが」と慎重に前置きしてから、昨年9月の旧ジャニーズ事務所初回記者会見の数時間後に、木村拓哉が敬礼らしきポーズをとる写真とともに「show must go on!」とインスタグラムに投稿(すぐに削除)したことへの違和感を率直に語った。木村が投稿したメッセージはジャニー喜多川氏が所属タレントを指導する際に多用したフレーズであるのはよく知られている。

 中村さんらの記者会見を受けて、翌日にスマイル社が公式サイトで発表した見解が悪質だった。「故ジャニー喜多川による性加害問題について、タレントには何の罪もないと考えております」。木で鼻を括る、とはこのこと。会見を観ずにこの見解だけを読めば、あたかも登壇者が現役タレントに「罪がある」と責め立てたかのような誤解を抱くのではないか。

 会見をすべて見届けたぼくが断言するが、先述した通り中村さんは慎重に言葉を選んで違和感を表明したにすぎない。むしろ罪深いのは誤読の余地のある表現を見解に織り込むスマイル社のほうである。ミスリードを狙ったと思われても仕方がない。

「罪」まではないにせよ、何らかの「責任」は生まれるという識者の意見が存在することに、スマイル社もスタート社も自覚的であるべきだ。連帯責任論に詳しい大峰光博・名桜大学教授が昨年6月に鳴らした警鐘を最後に紹介したい(初出はプレジデントオンライン)。

「喜多川氏による性加害の実態を知っていながら喜多川氏の人格を称賛し、その人物像を美化していたとすれば、たとえ被害者であったとしても、連帯責任がないとは言えまい」

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  3. 3

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  4. 4

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

  5. 5

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  1. 6

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  2. 7

    フジテレビは中居正広で“緊急事態”に…清野菜名“月9”初主演作はNHKのノンフィクション番組が「渡りに船」になりそう

  3. 8

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  4. 9

    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース