糖尿病壊疽の足切断を回避 「メカノセラピー」って何だ?
外傷や手術の傷は、皮膚の下層の真皮を縫う。しかし、これでは縫い口で真皮が上下左右に引っ張られ、真皮からできる肥厚性瘢痕やケロイドを引き起こす原因となる。
「そこで真皮よりもっと下層の皮下組織や筋膜を縫う。すると自然に皮膚が盛り上がって、傷口がぴったり合い、肥厚性瘢痕やケロイドができるリスクが減る。傷口が上下左右に引っ張られる力を分断したり弱めたりするために、切開の方法や向きも体の場所によって変えます」
事故で鼻の下に大ケガを負った女性は、「結婚式を迎える10カ月後までに傷口が残らないように治して欲しい」と小川准教授の外来を受診。鼻の下は唇などの動きで物理的刺激がかかりやすく、どうしても肥厚性瘢痕ができやすい。
「彼女も、外傷の治療後3カ月後に肥厚性瘢痕ができた。しかし、レーザー治療も併用しましたが、メカノセラピーで傷口への細胞の力を逃がすようにすることで、結婚式の1カ月前には傷痕は目立たなくなりました」
メカノセラピーの基本は、(1)物理的刺激に鈍感になった細胞に、強い刺激を与える(2)物理的刺激に敏感になった細胞に、力の分散を図る。陰圧閉鎖療法や肥厚性瘢痕・ケロイドの治療以外に、巻き爪や、短い骨を伸ばす骨延長術に利用されたり、変形性膝関節症、薄毛、美容などの研究が行われている。