がんと共生する時代がそこに 転移は「心臓ホルモン」で防げる
ANPはこの接着物質を減らすことで、がん細胞が血管にくっつくのを防いでいるのだという。
「がんが転移せず、いつまでも発生したところにとどまっていれば怖くありません。腫瘍が大きくなって他の臓器の働きを低下させない限りは、がんとの共存も可能です」
現在、ANPによる肺がんの転移を抑える効果を調べるため、「JAMP STUDY」と呼ばれる大規模多施設臨床試験が9月1日からスタート。先進医療Bに指定され、肺がんの8割を占める非小細胞肺がんで転移のない患者500人を募集し、手術のみの群と手術+ANP投与の2群に分け、2年後の無再発生存率を調べる調査が始まった。
その結果次第で、ANPが世界初の「抗転移薬」として注目されることになりそうだ。しかも、ANPはこれまで数十万人の心不全患者に投与され、重篤な副作用が報告されていない。心臓ホルモンは誰もが持っているので、従来の抗がん剤よりも安全で使いやすい。
がんは転移させず、コントロールして共存する。そんな時代が訪れるかもしれない。