従来の常識ガラリ 「進行肺がん」の生存期間延ばす最新治療
「シグナルの経路は1種類しかなく、それを抗がん剤で遮断すれば、がんの増殖を防ぎ、驚くほど小さくできる」
■驚くほど腫瘍が縮小
つまり、「がん化遺伝子を持つがんを抗がん剤で狙う」。肺がん治療の中の大きなトピックのひとつだ。この治療での「抗がん剤」は、特定の遺伝子を持つがんに反応して作用するので、「分子標的薬」と呼ばれている。最近の研究で、非小細胞肺がんの半分以上がEGFR遺伝子の変異があることがわかっている。また、非小細胞肺がんの4%には、ALK遺伝子の転座(染色体の一部が切れて別の染色体に付着すること)がある。
「EGFR遺伝子変異がある場合、『ゲフィチニブ』などの分子標的薬を従来の抗がん剤と組み合わせることで生存期間が大きく延びました。日本でのゲフィチニブ承認前後の進行肺がんの生存期間の比較では、承認前が13.6カ月でしたが、承認後は27.2カ月になりました」
ALK遺伝子転座には「クリゾチニブ」という分子標的薬があり、従来の抗がん剤治療に比べて、生存期間を2倍に延ばすという研究結果が出ている。これまでの“常識”がガラリと変わり、「効果の高い抗がん剤を選択し、十分投与することで生存期間が延長する可能性が高くなる」(山本教授)という。