がんに加え「エイズの疑い」も告知され空気が凍りついた
しかし、娘さんは「お父さんは不潔!」と叫び、1カ月後に自分の結婚式を控えていた息子さんは、「出席しないでくれ。婚約者にはエイズのことは絶対に言わないでくれ!」と話しました。奥さんは黙ったままうつむいていたそうです。
Dさんはがんの診断は覚悟していました。しかし、エイズの疑いがあるという告知によって、自分を見る家族の目が「蔑む」ようになったことに対し、何とも答えようがなかったといいます。
■本来は本人に意思を尊重
ここでは、A担当医がDさん本人の了解なしに、家族の前で「エイズの疑い」と言ってしまったことに大きな問題があります。
がんの告知は時代により異なります。1985年ごろまでは、患者本人にはがんという病名すら告知しませんでした。その後、2000年ごろまではがんの病名だけは告知しても、「予後」や「死」については話さない時代がありました。さらに2000年以降は「治らない短い命」まで告げる場面に出会うようになりました。