「余命1カ月」と記された書類にサインをさせられた患者
Fさん(56歳)は膵臓がんと診断され、手術を受ける予定でBがん専門病院に入院しました。しかし、手術直前の検討会で「病気の進行が速いため手術は無理」と判断されて退院となり、以後は内科外来に通院となりました。
通院しながら抗がん剤治療を始めて2カ月、今度は39度の発熱があって緊急入院。抗生剤点滴などの治療を5日間受けて解熱し、退院することになりました。その際、担当医から書類が渡され、署名を求められたといいます。内容は、「これまで膵臓がんに対して抗がん剤治療を行ったが、期待される効果は得られず中止とする。余命1カ月が考えられる。ご自分らしい日々を送っていただくために在宅で過ごされることを支援いたします」といったものでした。そして、一緒に近医への紹介状も渡されました。
Fさんは、これまでもたくさんの書類にサインしてきましたが、今回のサインの時は苦笑したそうです。
帰りの車の中で、「余命1カ月にサインさせるなんて……」と怒っていた奥さんに対し、Fさんは「もう、あの医者にはかからないのだから」と返したといいます。