手術不能の患者に希望を与える欧米流「がんの時間治療」
横浜市立大学付属市民総合医療センター消化器病・田中邦哉准教授
動物のあらゆる生体機能には、1日のうちで働きや分泌が最も高まる時間帯がそれぞれあり、時計のように規則正しいリズムを刻んでいる。それによって病気が悪化する時間帯にもリズムがある。この体内時計のリズムに着目し、最も効果的な時間帯に薬を投与して、治療効果を最大限に引き出す治療法のことを「時間治療」という。
国内では高血圧やぜんそくなどで時間治療がすでに普及しているが、他の病気でも研究が進められている。その中でも国内で唯一、がんの時間治療の研究を行っているのが、田中邦哉准教授(顔写真)だ。
「正確に言うと、対象としているのは大腸がんが肝臓に転移した場合の“転移性肝がんに対する抗がん剤時間治療”です。私は外科医師なので、転移したがんが大きいと手術で取れません。ですから、術前に抗がん剤で極力小さくして手術することを目的に時間治療を研究してきました」
どの抗がん剤にも、それぞれ体の代謝が最大になる時間がある。それがピークになる、副作用が出にくい時間を狙って投与することで、より大量の抗がん剤が投与できるという。