がん細胞がヒトの免疫監視システムをすり抜ける仕組み

公開日: 更新日:

 がん細胞は目印となるがん抗原さえも変化させていく。その仕組みのひとつがスプライシングバリアントだ。

 細胞内ではDNAをメッセンジャーRNA(mRNA)が転写する。それをリボソームと呼ばれる工場で読み取ることで、皮膚や骨、毛髪や酵素などの原材料となるさまざまなタンパク質を作っている。

「転写直後の前駆体mRNAは、タンパク質の情報が含まれているエクソン(翻訳配列)と含まれていないイントロン(非翻訳配列)が交互に並んだ構造をしています。一人前のmRNAになるには、イントロンを切り落としてエクソンのみになる必要があります。これをスプライシングと言います。この時、何らかの理由でがん細胞の抗原に関わるエクソンが切り落とされたらどうでしょう? そのがん細胞はがん抗原を持たず、がん免疫監視機構から逃れることになります」

 こうしてがん免疫監視機構から逃れたがん細胞は生き延び、増殖を続けた結果、がんになるというわけだ。

 さらに、がん細胞はその周囲に、がん微小環境と呼ばれる“城壁”を築き、免疫から逃れようとする。

 その環境下で作用しているのが、がん細胞が免疫を抑制する仕組みである免疫抑制で、その代表が免疫チェックポイントなのだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド