手紙を読んで死の恐怖を乗り越える術に一歩近づいた気がした
……要は、その力を引き出してやることだと思います。そして、その力はその人が生きてきた日常の中にこそあるのだと思うのです。
私は、先生の著書(がんを生きる)で、奈落に落ち込んだ主婦が、自分の死後ひとり残される夫が困らないようにアレコレ教えてやらなければと考えて、こうしてはいられないとばかり元気を取り戻すというお話がとても好きです。いい例だと思うのです。
私も深刻な病気を得た当初、今まで悩み相談をしたりされたりしていた人たちが「今のあなたはそれどころではないでしょうから」と、急に口をつぐんでしまったりするのに寂しい思いをしたことがあります。一生懸命人の悩み相談に応じている方が、自分なりにできることをしている日常を実感できて、むしろ救われるのです。
……一般的にアタマで考えることに慣れた人は、考える力に比べて感ずる力や信ずる力が弱いでしょうから、直感的に何かを悟ることは出来にくいと思います。攻撃は最大の防御なり、といいますから、死から目を背けるよりも正面から死を考えるのもいいのかも知れません。