死の恐怖を乗り越える術 頭で考えるのではなく“体に聞く”
「もう治療法はありません」「あと3カ月の命です」などと告げられ、私のところに相談に来られたたくさんの患者さんと接する中で、考えるようになりました。とてもつらい気持ちでおられる患者さんは“奈落”からどうやって這い上がれるのか。宗教ではなく、患者自身が死の恐怖を乗り越えられる、平穏な心になれる「術」をどうしても知りたいと思ったのです。
ある時、拙著「がんを生きる」を読んでくれた籏谷一紀氏から、手紙と一緒に本が届きました。「私は先生が探しておられる『死の恐怖をのり越えられる術』の条件にあうような体験をしたように思います」と送っていただいたのは、自身が悪性リンパ腫と闘った経験をつづった闘病記「体に聞く骨髄移植」でした。
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「この病気になると、どうしても自分の死を考えずにはいられません。本当に死が迫った時に心を支えるもの、それは生きてきた意味や生まれてきたことへの納得ではないかと思いました」
「死の問題を考え続けていると、一つだけ分かったことがありました。それは死の問題は頭で考えても決着がつかないということです。……しかし、答えがでるかどうかに僕の命がかかっていましたので、とにかく考えることだけはやめないでいると、『考える型』のようなものが自然に身についてきました。それは『体に聞く』という方法です。……具体的に動くという意味で……自分の人生を振り返るようにして過ごした場所を順々に巡って人生を再体験することを思いついた」