医師が提言 寝たきりなし「ピンピンコロリ」の理想と現実
そもそも現時点で寝たきりにならないための努力といっても確立した方法は存在しない。少なくとも医学的コンセンサスを得たものはないのだ。
にもかかわらず、自由に動けて意思を伝えられる、残り少ない時と大切なお金を使ってピンピンコロリという奇跡を目指し生活するのはバカバカしいのではないか、と名郷院長は言う。
「私は、子育てや仕事を介して社会的責任を果たし終えた人たちは、残りの人生を自分の好きなこと、輝けることに費やすべきだと思います。旅行でも絵でも好きなことをすればいい。どんなに立派な人であってもいつかお風呂もトイレも食事も他人の介助なしにはできなくなります。おむつが手放せなくなり、自分の意思すら伝えられなくなるのです。亡くなる前の一時期はそれが自然だと今から覚悟すべきです」
それは医学データが物語っている。2016年のデータによると、日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳で男女とも世界一。健康寿命も女性で74.79歳、男性で72.14歳である。01年の健康寿命は72.65歳、69.41歳だから、健康寿命も延びていることがわかる。しかし、その一方で寝たきりを含めた不健康だと感じる期間もまた延びている。