「適度な運動を行うようにしてください」と言わない理由
そういった経験もあり、私は「運動する」という言葉ではなく、「少しでも動くことを増やす」という言葉の方が、患者さんにはまだ響きやすいのではないかと考えています。
■健康寿命を保つために
現代人は圧倒的に座っている時間が長い。血糖値の高い患者さんでは、夕食後に数値が上昇しやすいのですが、「夕食後にソファに寝転がって、リモコンで面白いテレビ番組を探している」という方なら、「ソファに座ってテレビを見ましょうよ」と提案する。
もしそれができるなら、「ソファに座る」よりは「食べた食器を流しへ運ぶ」方がいいですし、さらには「台所で食器を洗う」「洗った食器を拭いて食器棚に片付ける」などの方がいい。「食後の散歩」となると腰が重くなり「あすからでいいか」となりがちな人も、座ってテレビを見たり食器を片付けるくらいなら、やってみようかと思いませんか?
「動くことを増やす」ことを意識して欲しいのは、目の前にある肥満解消、生活習慣病改善だけが目的ではなく、健康寿命を保つため。フレイルやサルコペニアという言葉をご存じでしょうか? フレイルは日本語訳では「虚弱」で、加齢で心身が老い衰えた状態。サルコペニアは加齢などで筋肉量が減少し、全身の筋力低下および身体機能の低下が起こること。いずれも寝たきりになりやすく、健康寿命を短くします。