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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

肺がんの臨床試験で注目 2剤の併用で再発リスクが4割減

公開日: 更新日:

 それぞれの分子標的薬は単独で使うと、保険が利きますが、併用では利きません。今回の臨床試験を受けて、保険適用が実現すれば、患者さんにとっては大きな福音でしょう。

■薬が効かなくなる仕組み

 ところで、なぜ分子標的薬が効かなくなるのでしょうか。その点について、簡単にふれておきます。がん細胞は、ある細胞にできたたった一つの不死細胞が、免疫の監視網をかいくぐって増殖したもの。転移は、元の不死細胞の遺伝子を引き継いだクローンです。

 ところが、がん細胞は細胞分裂のときに遺伝子を正確にコピーするシステムが破綻していて、分裂を繰り返すうちに、さまざまな遺伝子変異が積み重なっていきます。クローンのように見えるがんは一枚岩ではなく、次第にさまざまな性質を持つ混成部隊に変貌するのです。

 そんな遺伝子の多様性が、治療にも悪影響を及ぼします。従来の抗がん剤もホルモン剤も、最新の分子標的薬も、薬を使い続けるにつれて、次から次へと遺伝子変異を生じるため、薬がだんだん効かなくなるゆえんなのです。

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