遺伝子の本体「核酸」を用いて遺伝子発現を制御する画期的な薬
今回は最も新しい遺伝子治療薬を紹介します。「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」に対する「ビルテプソ」(一般名ビルトラルセン)という薬で、2020年3月に承認されたばかりです。
筋ジストロフィーは筋肉の壊死・変性が次第に進行していき、筋力が低下することでやがて呼吸ができなくなってしまう、生命を脅かす難病です。いくつかの種類に分類されていて、そのひとつで最も代表的なものがデュシェンヌ型です。根治療法はなく、ステロイド薬での治療が一般的でした。
DMDは原因となるDMD遺伝子の異常によって、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質が作られなくなります。
ジストロフィンは筋肉細胞の一構成要素で、なくなると筋肉細胞が壊れやすくなってしまいます。この筋肉細胞の変性と破壊は徐々に進行していき、結果的に筋肉が働かなくなってしまうのです。
ビルテプソは「アンチセンス核酸」と呼ばれる、ある特定の配列を持った核酸(遺伝子の本体)に結合することができる物質です。