感染封じ込め成功国からの帰国<1>マスク姿は街から消えている
台湾に駐在中の社会福祉団体職員、古川亮一さん(仮名=40)は、記録的な猛暑が続く8月12日に帰国した。新型コロナウイルス対策で、出入国が面倒な帰国は避けたい。そのため、6月と7月に帰国日を、2度も延長していた。だが、仕事の都合でもう限界である。数年ぶりの帰国になった。
古川さんが長く住んでいた台湾で、コロナ感染者第1号が見つかったのは1月21日である。
発生の地、中国・武漢で働いていた台湾女性が、帰国した「桃園国際空港」で発熱症状を訴え、検査の結果、コロナ感染が確認された。中国と台湾は、海峡を挟んでわずか150キロの至近距離である。台湾は面積が九州ほどの国土に密集して、約2300万人が住む。台湾政府は、爆発的な拡大(アウトブレーク)を想定し、強い危機感を抱いた。
「温暖な台湾では、冬でもマスク着用の習慣がありません。しかし2003年に流行したサーズ以来、少数ですが、マスク着用の台湾人が目立つようになりました。国民全体が健康志向を望むきっかけになったのでは」(古川さん)