高血圧の改善に「お酢」が効く 第一人者がメカニズムを解説
「血圧が高い」「動脈硬化が心配だ」――そんな中高年は、この年末年始をダラダラと過ごすのではなく、お酢で体質改善に乗り出してはどうか。
昔から何となく「お酢は体にいい」と言われてきた。これ、あながち間違いではない。
食酢研究の第一人者で、東京農業大学名誉教授の小泉幸道氏(発酵食品学)は、「お酢の健康効果は昔からさまざま伝えられてきました。それが科学的に解明されて、長期間にわたって取り続けることで得られる素晴らしい効果についても分かってきました」と指摘する。
そのひとつが血圧の上昇を抑える効果だ。
厚労省の「国民生活基礎調査」(2019年)によると、通院する割合が高い疾患は男女とも「高血圧症」が最も高かった。しかも「国民健康・栄養調査報告」(14年)によると、75歳以上の男性で74%、女性で70%と年齢が高くなるほど高血圧患者が増えることも分かっている。その症状の改善に、お酢が役立ちそうなのだ。
「酢の酢酸には血圧上昇に関わるホルモン調節機構レニン・アンジオテンシン系を穏やかに抑制する働きがあります。それと同時に、酢酸代謝の過程で生成されるアデノシンが血管拡張を引き起こすことでも血圧が降下するのです。実際、血圧が高め(最高血圧130~159㎜Hg、最低血圧85~99㎜Hg)の成人男女に1日大さじ1杯のお酢を10週間毎朝続けて摂取してもらったところ、平均で最高血圧が6・5%、最低血圧が8・0%下がったという研究結果があります」(小泉氏)
もっともお酢の効果は高い血圧を下げるまでで、正常な人の血圧までは下げないそうだ。
■タマネギと一緒に摂取すると効果アップ
血管が拡張されれば、血管の内側の壁(血管内皮)が傷んだり傷ついたりして炎症を起こすケースも減る。これは動脈硬化の予防につながる。
「血管で炎症が起こると活性酸素が発生し、血液中のコレステロールが酸化します。動脈硬化は、これが傷ついた血管壁に取り込まれてしまうことで起こるのです。私は、お酢の健康効果をさらにアップするために、タマネギと一緒に摂取することをおすすめしています。タマネギには硫化アリルの一種アリシンとポリフェノールの一種ケルセチンが含まれています。アリシンには血管内皮をしなやかに保ち血流をスムーズにする作用があり、ケルセチンには活性酸素の害から全身の細胞を健やかに保つ作用が認められています」(小泉氏)
ただしアリシンは熱に弱い性質があり、加熱すれば分解されて機能しなくなる。
「私の家では『酢タマネギ』を常備しています。作り方は①タマネギの皮をむき、薄切りにする②全体に塩をまぶし、しんなりさせる③保存容器に入れて酢と蜂蜜を加える④蓋をして冷蔵庫で保存する――と簡単です。翌日から食べられるので、試してみてください」(小泉氏)
どうせやることのない正月だ。この機会に常備菜として仕込むのもいいだろう。
もちろん「お酢さえ飲めばオーケーというわけではありません」(小泉氏)。
近所の散歩ぐらいは日課にしよう。