肥満は薬で治る時代が来る? 糖尿病薬の使用で体重15%減
肥満は糖尿病などの生活習慣病の原因となり、膝や腰を痛めると骨折の原因にもなります。つまり、肥満は立派な病気なのです。この病気の厄介なところは、有効な治療がまだ発見されていないということです。高度の肥満が多く、肥満の増加が社会問題化しているアメリカでは、手術で胃を縮めるような治療が、日本より積極的に行われています。
しかし、こうした手術治療も万能ではなく、合併症が起こることもありますし、減少した体重が再び増加するリバウンドも少なくないと報告されています。
肥満の治療に使われる薬もいくつか開発されていますが、今のところ、安心して使えて確実な効果がある、という薬はないのが実際です。
そこで最近注目されているのが「GLP―1受容体作動薬」という糖尿病の薬です。この薬は血糖を下げて体重を減らすような働きがあり、肥満の合併症である糖尿病の治療にもなるので、一石二鳥であると考えられたのです。
今年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に、このGLP―1受容体作動薬のひとつである「セマグルチド」という週に1回の注射薬を用いた臨床試験の結果が報告されています。それによると、1年以上の使用で体重は平均で15%近く低下し、問題のあるような強い副作用も認められませんでした。肥満は薬で治る時代が来るかもしれません。