「肉腫」の手術は腫瘍を残らず切除して心臓を“再建”する
技術的なハードルが高いうえ、そうした処置の経験がないため、そこまで行う医療機関はほとんどありません。しかし、私は30年以上前から肉腫の手術経験を重ねてきているので、「腫瘍をすべて取り切ってほしい」と希望する患者さんが紹介されて来るのでしょう。
中には、中途半端な処置によって腫瘍が残り、再発した患者さんが当院にやって来ることもあります。進行を考えると時間的な猶予がなく、前回の手術から2カ月ほどしかたっていない段階で再手術を行った患者さんもいます。手術から日が浅いため切除した部分の癒着がひどく、かなり厄介な状態でしたが、それでも腫瘍はすべて取り切りました。残せば“先”はないのです。
ただ、手術で肉腫を取り切ったとしても、それで安心できるわけではないのが実情です。前回もお話ししたように肺などへの転移も多く、術後に実施する抗がん剤治療がどこまで奏功するかにかかっています。また、腫瘍を取り切ったと思っても、「断端陽性」が認められるケースもあります。肉眼ではわからない腫瘍が血管や弁などの組織に侵食している場合があるのです。ですから肉腫の手術は、まずは心臓突然死を防ぎ、その後の抗がん剤治療をスムーズに行えるようにするための治療といえます。