脱腸・盲腸でも術後1時間で帰宅可能に コロナ禍で需要が増加
脱腸や盲腸の手術は、無事に終われば全身的な負担は少ないものの「入院した方が、何かあったときに安心だから」という意識が医師も患者さんにもあり、日本ではほとんどの方が入院して治療を受けてきました。
しかし欧米では、脱腸や盲腸は日帰り手術が当たり前。腹腔鏡手術では、わずか5ミリの細いスコープを使うため、治療時のキズを小さく抑えられます。具体的には、腹部に通常3カ所、直径3~5ミリの穴を開ける程度。だから、体への負担や痛みが少ないのです。
さらに、麻酔薬も進化し、覚醒までの時間が短くなりました。実際、手術後、平均15分ほどで歩け、1時間ほどでクリニックを出ることができます。
私たちは、2015年11月から19年12月までに当クリニックで行ったすべての脱腸日帰り腹腔鏡手術(術式は「腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術=TAPP法」)1408例の短期成績や安全性を検討しました。要旨としては、日帰り成功率は99.8%と良好な成績で、死亡・後遺症とも0例。
薬剤アレルギーやぜんそく発作という予期せぬ合併症で入院となった患者さんが0.2%。その他の合併症はいずれも軽症で治癒しているという内容で日本臨床外科学会雑誌に収載されました。
なお、本報告は日本語文献初の大規模研究として優秀論文賞を受賞しています。
日帰りで手術できるなら、日帰りで。本連載で、みなさんに日帰り手術の正しい知識をお伝えしたいと思っています。