人工妊娠中絶が非合法化? 最高裁の文書リークで全米が大炎上
アメリカでは最高裁判所の内部文書がリークされるという異常事態をきっかけに、人工妊娠中絶の是非をめぐる大炎上が起きています。女性の健康や人生に関わる「中絶」が、文化的、宗教的、さらに政治的に利用されている状況がそこからははっきりと見えてきます。
今回リークされたのは、最高裁の保守判事アリート氏が「中絶は非合法化されるべき」と述べた内部文書でした。最高裁では早ければ6月末にも中絶の是非についての裁定を行う予定で、その準備段階で作成されたものと考えられています。
アメリカでは人工妊娠中絶は1973年の最高裁判決で合法化されましたが、それ以降、中絶に反対する保守共和党と容認派のリベラル民主党の間で、その認否は一種の踏み絵のようになっていました。しかし過去30年で避妊が浸透し中絶の数が半減したこともあり、6割のアメリカ人が「必要な人は施術を受けられるべき」という考え方になり、この状況が続くものとみられていました。
ところが、それを再び熾烈な争いに変えたのは、2016年の大統領選に出馬したトランプ氏でした。「中絶を再び非合法化し女性に罰則も与える」との公約はアメリカ人を仰天させましたが、保守勢力を燃え上がらせ当選につながりました。彼の在任中から、多くの保守州では中絶を事実上禁止する厳格な法律を次々に制定。合憲か否かの審議を最高裁に持ち込み、一気に連邦として非合法化する作戦を続けてきました。