人気医師の和田秀樹がズバリ教える「老化を遅らせる生活」

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60代からの夫婦 相手のオムツを替えられるか

 仕事を続けるにしても現役時代のようにフルタイムではなく、プライベートも楽しみつつなのが高齢者の仕事だろう。そうすると、夫婦の時間が現役時代より増える。実はそれがストレス源になりかねない。

「夫源病という言葉があるように、妻にとって定年退職した夫が朝から晩まで家にいられるのはとにかく苦痛。在宅の夫はストレス源で、妻は抑うつ傾向を示すようになることがあります。私のような老年精神科医が抑うつ状態の初老女性を診察するときは、夫の影響を前提にするほどです」

 家にいる夫は、妻に食事の支度を要求。妻が外出しようものなら、「昼メシはどうなるんだ」と怒鳴る。そんなイザコザが続くと、妻は外出したい欲求を抑えてストレスをため込んで、腹いせに掃除を始め、「邪魔だからどいて」と夫を邪険にすると、怒りが怒りを呼び、互いが相手のストレスになる悪循環だ。

「女性にも、男性ホルモンが分泌されていて、閉経後は相対的に男性ホルモンが多くなります。高齢女性がアクティブに外出するようになるのは、男性ホルモンの影響も強い。逆に男性は、男性ホルモンが少なくなって、意欲が低下し、引きこもりがちになる。良好な夫婦関係のためにも、活力のためにも、高齢男性は男性ホルモンを補充するといい」

■ほどよい距離感=自由の尊重

 そのうえで、60代からの夫婦生活は、現役時代よりも距離感が大切になるという。

「60代以上は若い世代よりも専業主婦が多く、夫が仕事をしている間、家庭にいる妻は自由でしたから、その世代の女性にとって、引退後の夫は自由を奪う存在でしかありません。だから距離感が必要なのです」

 ほどよい距離感とは、夫婦の自由を尊重することだ。具体的に?

「昼食は自給自足で、自分で食べること。何も夫が自分で調理する必要はなく、コンビニやスーパーで買ってくればいい。可能なら、朝食も別々をいとわないのがベターです。そして妻が外出するとき、行き先を詮索せず、『一緒に行く』などと言ってはいけません。そして誤りやすいのが、共通の趣味です。若いころから一緒に楽しめることがあるならともかく、60代から共通の趣味を持つのはナンセンス。それぞれ異なる趣味を尊重するのが正解です」

■互いの相性が問われるとき

 若くして結婚した夫婦は、仕事や家庭に忙しい。子供がいればなおさらで、2人が向き合う時間はほとんどない。60代からの夫婦こそ、向き合う時間だろう。

「60代以上は見合いが多く、家柄など条件優先の結婚でした。恋愛結婚で性格を吟味したとしても、ルックスや安定などが重視された。お互い、“条件”の中で生活を進めてきたので、相性は二の次、三の次です。仕事も家庭もスローダウンする60代以上は、そんな条件を外して初めて夫婦の相性が問われるときでしょう」

 だからこそ、お互いの自由を尊重する努力を続けることが、60代、70代の夫婦の形。それが夫婦として「正解」といえるだろう。

「それでも『この人とは寄り添えない』という決断に至ったのなら、それは2人の相性が合わないということです。これからの時代、離婚してそれぞれの道を歩むのも、選択肢のひとつだと思います。家庭内別居、仮面夫婦の高齢男女は、確実に心を病む。そんな人を嫌というほど診てきましたから」

 夫婦の将来を見極める目安があるという。

「夫婦が一緒にいれば、必ず介護が必要になります。それを前提として、相手のオムツを嫌がることなく替えられるかどうか。相性の相違があったり、家庭内別居状態だったりすれば、抵抗を感じるはずです」

 夫婦水入らずで過ごすか、お互いのストレスを自覚して袂を分かつか。どちらを選ぶにせよ、まず夫婦が向き合うこと。そこにそれぞれにとっての70歳の正解があり、それが元気に80歳の壁を乗り越える原動力となるかもしれない。


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