人気医師の和田秀樹がズバリ教える「老化を遅らせる生活」
免許返納より大事な薬の見直し
75歳以上で死亡事故の主因である「操作不適」のうち、ハンドルの操作不適が15.3%、ペダルの踏み間違いが10.7%に上る。よく知られている通りだが、最新のサポートカーなら、事故を防ぐことができる可能性があるだろう。
75歳以上で「操作不適」に続くのは、「安全不確認」「内在的前方不注意」だ。和田氏が「ほかに考えるべきことがある」と強調するのは、「安全不確認」や「内在的前方不注意」を起こす原因だという。
「このような不注意を起こす要因として、薬の影響が考えられます。高齢者は、薬の代謝にかかわる肝臓や腎臓の働きが低下していることがあり、薬の成分が長く体に蓄積し、副作用が生じやすいのです。薬の種類が増えればなおさらで、認知症のような症状が現れることもあります。睡眠薬や鎮痛剤、精神安定剤などは、そういう副作用を起こしやすい。免許返納を考えるより、薬の見直しを考える方が先決なのです」
薬が6種類を超えると、副作用の頻度が15%近くに上昇。認知症が疑われた人のうち、2割は複数の薬を服用したことによる副作用だったという報告もある。
それで薬を見直したところ、物忘れや傾眠傾向などが改善。中には、寝たきりだった人が歩くようになるなど劇的によくなるケースもあるという。
「たとえば1歳児と13歳の中学生が風邪になったら、医師は体の大きさに応じて薬の量を調節して処方します。それが成人になると、そうでもありません。やせ細った高齢者と元気でふくよかな50代が同じ病気なら、同量の薬が処方されるのです。おかしいですが、それが現実。たとえ“適正”な処方量でも、高齢者に副作用が起こりやすいのは、このことも影響しているのです」
75歳以上は、24%が7種類以上の薬を服用しているというから心配だ。なるほど、薬の見直しが欠かせない。