食品業界注目の「サゴヤシ」は何がすごいのか 忍び寄る「食糧難」の救世主?
「サゴヤシは1本あたりおよそ200㎏を超えるデンプンを蓄積し、1ヘクタール当たり20トン以上のデンプンの収穫が可能とされる作物です。他の植物が生息できない、泥炭湿地で育ち粗放な管理で栽培が可能なうえ、世界では220ヘクタールで生育するうち10%程度しか使われていない。そのため、栽培、収穫、輸送の研究を進めれば、この低利用・未利用作物が食糧難時代の救世主になるのでは、と期待されているのです」
サゴデンプン100g当たりのエネルギーは、精白米飯の約3倍、トウモロコシの約4倍。インドネシアではすいとん状、パプアニューギニアではパンケーキ状などに利用されていて、年間2万トンを輸入する世界最大の輸入国・日本では加工デンプンがうどんなどの打ち粉として使用され、年々その用途が広がっているという。
「サゴデンプンはタンパク質がほとんど含まれていないため、低アレルゲン素材としての活用が期待されていて、グルテンフリーの麺などにも使われるようになっています。最近では、欧州などでもサゴヤシデンプンが注目され、パスタの原料としての輸入相談が寄せられています。まとまりやすくて、べたつかないことから、喉に食べ物が詰まりやすい高齢者や乳児の食べ物としての開発利用も進んでいます。また、食物繊維のように小腸で吸収・消化されず、大腸まで届いて善玉菌のエサになるため便通の改善になることがわかっています。しかも原産地では食後血糖値が急上昇しにくい食材とされているのです」