名郷直樹
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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

統計医学的検討…「有意差なし」は必ずしも「効果なし」の意味ではない

公開日: 更新日:

 同じように相対危険であるオッズ比の方も見てみよう。95%信頼区間は0.54~1.23である。感染の発症を100から54に減らすかもしれないし、123に増やすかもしれない。こちらは、減らすにしろ増やすにしろ、それなりに影響がある結果に思うだろう。ただ、増やすとも減らすともはっきりとは言えないというのは、差で見たときと同様である。

 続いて危険率を見てみよう。差で見た場合は0.38、相対危険で見た場合には0.33とある。この数字を正確に解釈するのはむつかしいが、とりあえず「マスク推奨の効果があったとしても、その効果がまぐれであった可能性」と考えると理解しやすい。0.3%発症が減ったといってもまぐれの可能性が38%あるし、100から82に減らしたといってもまぐれの可能性が33%あるということである。まぐれで効果ありの可能性が30%以上ある、偶然効果ありという結果が出た可能性が30%以上である。故にマスクに効果があるとは言えない。これが検定のプロセスである。

 そこでまぐれの可能性、危険率がどれくらいであればまぐれでないと言えるのか、ということであるが、一般に医学論文では5%未満が採用される。この結果で言えば、5%以上なので統計学的に有意な差はないということになる。

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