真夏前に知っておくべき「性感染症」(3)潜在的な患者数は梅毒を上回る「アメーバ赤痢症」
「アメーバ赤痢症」と呼ばれる病気をご存じか? 肛門をなめることでアメーバ赤痢原虫に感染する性感染症で、医師が診察したら全例報告の対象となっている5類感染症のひとつだ。消化管に寄生している病原体が糞便中に排出され、口を経由して再び腸や肝臓などにとりついてさまざまな症状を引き起こす。
性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長が言う。
「発展途上国では汚染された食べ物を口にすることで感染することの多い病気ですが、衛生環境が維持されている先進国ではむしろ性行為での感染が増えています。潜伏期間は2~4週間で、典型的な症状は下痢、高熱、しぶり便、それに排便時の下腹部痛など大腸炎の症状を繰り返します。診断の決め手は、イチゴ状の粘血便です。トイレットペーパーに血がつくため痔と間違える患者さんもいます」
アメーバ赤痢原虫は血液を介して他の臓器に侵入することもあり、その多くは肝臓に現れる肝膿瘍のような症状を来す。
「具体的には38度以上の高熱、肝臓の痛み、吐き気、寝汗などです。アメーバ赤痢症は大腸炎と肝膿瘍が合併することが多いこともわかっています。ただし、症状が軽いため見逃されることも多く、治療の遅れで亡くなるケースもあります。治療は内服薬が第1選択で比較的簡単ですが、アメーバ赤痢は通常の大腸炎ときちんと鑑別して治療することが重要です。抗原虫薬を使わずにステロイドを使うと腸管穿孔が起きることもあります」