認知症の新しい薬は今までの薬とどこがどう違うのか?
世界的権威の医学誌に素晴らしい報告があった
薬において画期的な第一歩を踏み出したアルツハイマー型認知症の治療。さらに私は、予防についても国際的な素晴らしい報告があったことを皆さんに伝えたいと思います。
世界的権威の医学雑誌「ランセット」に今年、認知症専門家からなるランセット委員会が、この分野で最も優れたあらゆるエビデンスについて調査分析した結果が掲載されました。それは認知症のリスク因子に関するもので、過去にも2度掲載されています。
最初の2017年には9つのリスク因子、続いての20年の調査結果では12のリスク因子が紹介され、12因子を全て改善できれば認知症の発症を40%予防できる効果が期待できると報告。そして24年の発表では、過去の調査結果が更新され、新たに2つのリスク因子が加わったのです。
それは、視力の低下とLDLコレステロール値(悪玉コレステロール)の上昇です。
特にLDLコレステロールの上昇は、計14のリスク因子のうち難聴と並んで認知症発症との関連が最も強いとされています。
14のリスク因子を全て改善できれば、前回よりもアップした45%、認知症発症の予防が期待できるとのこと。
薬も大事ですが、私は予防法も非常に大事だと考えています。認知症のリスク因子として挙げられているものの多くは、生活習慣病の予防にも関連しています。周囲とコミュニケーションを取り、仕事や買い物、趣味を楽しみ、人生を謳歌する上で欠かせないものも多い。心身ともに健康でいてこそ、認知症発症を抑えられるのだな、と改めて感じます。
私たちは認知症という敵と戦うための大きな武器を得ました。それは薬であり、予防策である。たとえ発症したとしても、症状を進行させないさまざまな手段があるのです。
ますます「認知症=絶望ではない」時代になってきた。武器を生かさない手はありません。