「頭の中に“爆弾”が…怖くて咳もできなかった」公認心理師のリズ山崎さん「脳動脈瘤」を語る
リズ山崎さん(作家・公認心理師/64歳)=未破裂脳動脈瘤
未破裂の脳動脈瘤の治療で開頭手術をしたのは11年前、53歳の10月でした。
脳動脈瘤が見つかったのはその半年ほど前。趣味のバレエ教室で、いつものようにレッスンを受けていると急に頭痛がしたのです。その始まりが「ドーン!」というはっきりしたものだったので、違和感を覚え、母親に連絡してみたところ「すぐ病院に行きなさい」と言われ、その日のうちに母が定期的に通っている脳神経クリニックを受診しました。
MRI検査の結果、「頭痛とは関係ないけれど、左目の奥あたりに3ミリの脳動脈瘤がある」と告げられました。年配のベテラン先生の説明によると、「手術が推奨されるのは5ミリ以上の瘤。でも小さくても破裂しないとは言いきれない」とのことで、大学病院を紹介されました。
あまりに突然で、「えー?」と驚くしかありませんでした。頭痛はいつの間にか治っていましたから、もし放置していたら破裂するまで気づかなかったと思います。頭痛と「すぐ病院へ」と言ってくれた母に救われました。
さすがに頭の中にいつ破裂するかわからない“爆弾”があると知ってからは、怖くて咳も思いきりできませんでしたし、靴の紐を結ぶのも躊躇しました。なるべく頭の血管に負担をかけないようにナーバスになっていましたね。
大学病院では手術について説明されました。脳動脈瘤では鼠径部から脳の瘤までカテーテルを通し、コイルを入れて瘤に血液が流れ込むのを防ぐ「コイル塞栓術」が最も傷が小さく済む方法です。でも、私の瘤はくびれのない、なだらかな山型をしていたのでコイルを入れてもあまり意味がないらしく、やるなら頭蓋骨に穴を開けて瘤をチタンのクリップでつまむ「開頭クリッピング術」しかないとのことでした。
ただ、3ミリというサイズが微妙で、手術をしたほうがいいのか、まだ大丈夫なのかをたずねても、クリニックのベテラン先生も大学病院の先生もはっきり答えてくれませんでした。その後、セカンドオピニオンでもうひとつの病院に行きましたが、そこでも結果は同じ。「どうするかは自分で決めてください」と。それって、酷ですよね? ネットで調べてみると、破裂した場合、後遺症なく助かる人が3分の1、後遺症が残る人が3分の1、命を落とす人が3分の1とざっくりした数字が出てくるのです……だんだんうつっぽくなりました。
悩んだ末、ふと思いついて、先生方にこう質問したのです。「もし先生のご家族なら手術しますか?」と。すると先生方3人とも「すると思う」とおっしゃったのです。それで踏ん切りがつき手術を決意しました。我ながらいい質問の仕方だったと自負しています(笑)。
後遺症の可能性などについての話はありましたが、もう迷いませんでした。あとは先生にお任せするしかない。自分が頑張れることは先生を信じることだけだと覚悟しました。
検査入院を経て、10月半ばから2週間入院しました。少しぜいたくをして個室にしてもらい、入院当日にハロウィーンの飾りつけをしました。普段の生活の延長でありたかったのです。パジャマ代わりにスエットを着たり、食事はベッドを下りテーブルで食べたりして、病人らしくならないようにしました。