(4)なぜその判断をしたのか?基準や根拠を見直してみる
「自身の“判断”と向き合うことが、アルコールのコントロール障害を回避する」と語るのは、ライフサポートクリニックの山下悠毅院長。依存症治療のスペシャリストだ。
人の判断基準は、①その時の気分②言葉の使い方③自分の中の優先順位④思い込み⑤参考情報の出どころ。この5つに依拠しているといい、前回の①と②に続き、今回は③から説明する。
「例えば、新居を借りる際、駅からの距離、広さ、静かさなどで、『自分の中で何が一番大切なのか』といった優先順位をつけなければ、予算内で新居を見つけることはできません。駅チカで広くて静か、そんな物件を予算内で探すことは不可能です。お酒を飲むときも同じです。ストレス発散、仕事での人間関係、家族からの信頼、健康状態、お金の使い方……お酒でやらかさないためには、自分の中での優先順位を自覚し、ときには見直すことも大切です」(山下院長=以下同)
想像してほしい。飲酒しているとき、飲んでいる瞬間と明日の気分、どちらを優先するか。それだけで判断は変わるはずだ。では、④は何か?
「私たちの選択は、思い込みが大きく影響します。『20代で飲めた量は40代以降も飲める』と考えている人がいます。しかし、年を重ねれば誰もが代謝は落ち、物忘れも増えるため、昔と同じ量を飲めば、記憶が飛んだり、失敗をやらかすのは当たり前です。『飲むのも仕事のうち』と信じている人もいますが、『(自分は飲まずに)酔ったふり』をした方が、必ずいい仕事ができます」