(2)寿命の差は男性ホルモンの血管保護作用が弱いから
ところが男性側は、男性ホルモンの血管保護作用が残念ながら女性ホルモンほど元々強力ではない。熟年期に入り男性ホルモン(テストステロン)が徐々に減り始めるや、早速その保護作用が薄れてきて、血管硬化機序が進み、血管障害性死亡が増えてくる。
この男・女性ホルモンの作用機序の差が、50~80歳代での生存曲線の大きな開きが生まれる背景だ。
今までの医学では、男性寿命が短い原因として、メタボであるとか、お酒やたばこをのむとか、生活上の乱れががんをつくりやすいと注目されていたが、実は血管系疾患問題が寿命格差を生んでいたと考えられる。
健康そうにみえていた働き盛りの50~70歳代の男性が、心筋梗塞や脳梗塞で突然死するエピソードはこのような男性ホルモン低下による血管老化の加速という流れで起きている。
男性ホルモンの低下は、「がん」のように積極的に検査も行われないので、ひそかに忍び寄っている血管系の病理が、そのうち深刻な問題を起こして命を縮めることになるリスクがあると言える。