2500万円の税金滞納。以来、坂道を転がるように…
こんなことが何度かあればどうなるか。やる気がなくなる。身から出たサビとはいえ、稼いだ尻から差し押さえられるとなれば、以前のように仕事に身が入らない。当然、坂道を転がるように会社の収入はなくなっていった。
税務署は差し押さえの強硬手段を取る前には、取引先へお尋ねの文書を送付したり、直接、電話でこちらの売掛金の有無を照会する。未払い金があれば差し押さえる。
これが私には堪えた。なにしろ信用がなくなる。取引先出版社にしても税務署に目をつけられている不良編集プロダクションなどと関わりたくはない。自分のところにどんなとばっちりが及ぶかわからないからだ。ある時、税務署員が家に訪ねてきて「大変失礼な言い方ですが、あなたの年齢(当時私は67歳)からいって延滞税を含めた約2500万円の税金を支払うのは無理でしょう。会社を清算したらどうですか」と親切に勧めてくれたことがあった。
私はそこまで踏ん切れない部分と生来の面倒くさがりな性格もあって、すぐそれを実行することはなかった。しかし食わねばならない。
高齢の私は交通誘導員になるしかなかった。