【能登半島地震 現地ルポ】断水下の被災者を苦しめる深刻なトイレ問題…避難直後の光景がトラウマに
便器の上にポリ袋をかぶせ、くぼみに凝固剤やちぎった新聞紙を入れて用を足す簡易トイレもあるが、決して万能ではない。輪島市の中学校に避難する80代の女性はこう吐露する。
「年寄りには、簡易トイレでの“やり方”がよくわからないんです。袋を広げ、凝固剤を流すのもひと苦労。自分がモタモタしているうちに、混んでしまうのではないかと。トイレに行くのも気後れしてしまいます」
実際、「簡易トイレは準備に時間がかかり混雑してしまう」という声も、現地では多く聞かれた。
県内の避難所では仮設トイレの設置が着々と進むが、それでも前出の80代の女性はこう訴える。
「仮設トイレは屋外にあり、高齢者は行くのが大変なんです。臭いも気になりますし、不審者の目撃情報があるので、小さい子や女性は防犯上、誰かが一緒についていかなければならない。トイレが使えないことがこんなに困るとは……」
トイレを我慢することで健康被害を発するリスクもある。水分や食事を控えるのも禁物。悩みは深刻だ。
(取材・文=橋本悠太、橋爪健太/日刊ゲンダイ)