藤城清治さんが語る「猫愛」 もうすぐ100歳の僕と、2歳になる子猫のアビッツ
アビッツはラビーと違い、実にやんちゃないたずら坊主
一昨年になって、アビシニアンの子猫がいると聞いて飛んで行った。話をしているとドアが開き、一匹の子猫が僕を目がけて一直線に走ってきた。そのまま僕の胸に跳びついて、喉をぐるぐる。ブリーダーさんは慌てた。その子猫はキャットショーでチャンピオンを取るべく育成中なので譲ることはできないという。他の子猫が候補だったのだ。
でも僕は、一直線に僕のもとに駆けてきた子猫以外目に入らなかった。ブリーダーさんは渋々承諾。それがアビッツだ。
アビッツはラビーと違って実にやんちゃないたずら坊主。なにしろ跳んだりはねたりスピードが速い。去年の暮れにはアビッツの動きに追いつかず、僕は転んで顔面を打ってしまった。みんなはとても心配したけれど、当のアビッツはもちろん知らん顔。そして僕も笑ってしまった。俊敏なアビッツをしつけているようで、僕は猫にしつけられているのかもしれない。100歳、まだまだがんばらなければ。
先代のラビーはフランス語で「人生」、いまのアビッツは、フランス語の「生きる」(AVI)の意味もある(※)。僕を若返らせ、心も体も元気づけてくれる。
(構成=鈴木美紀)
※アビーは「生きる」の他にも次の意味がある。「動物」はフランス語でAnimaux、「生きている」はVivants。「生きている動物」の頭文字をとったAVI(アビー)は、航空大国だったフランスの栄光を語る言葉。
▽藤城清治(ふじしろ・せいじ) 1924年生まれ。東京都出身。日本を代表する影絵作家。48年から雑誌「暮しの手帖」に影絵を連載。61年、等身大ぬいぐるみ人形劇を創設。テレビ番組「木馬座アワー」が人気を呼び、国民的キャラクター「ケロヨン」は今なお親しまれている。作品は世界各国で高く評価され、現在も精力的に活動中。栃木県那須町に「藤城清治美術館」、東京・洗足駅前に「ラ・ビーカフェ」がある。
(日刊ゲンダイ特別号「日刊ニャンダイ」より)