なすなかにし那須晃行は42歳で緊急手術、「若年性脳梗塞」は一時的症状の見極めが生死を分ける
徳永英明は40歳のライブ中に歌詞が消えた
若年性脳梗塞は、特殊な病気で血栓ができる可能性も知られている。そのひとつは、脳を養う内頚動脈に異常が見られるもやもや病で、歌手の徳永英明(63)はこの病気と脳梗塞の予防で2016年、バイパス手術を受けたことが話題になった。実はその15年前、40歳のときにも、同じ病気が判明。1年ほど休養したことがあった。
病気の診断がつく前の徳永は、人気歌手としてツアーはもちろんメディア出演を多数こなし、睡眠不足。酒もたばこも好きで、コンサート終了後も、麻雀やテレビゲームを繰り返していたという。ピンチの体はSOSを発し、手足のしびれやだるさなどTIAのような症状が見られたものの放置しているうちに、2001年5月、ライブの途中、急に歌詞が頭から消え、舞台袖に引き下がるアクシデントに見舞われた。その後、ステージに戻り、翌日の公演もこなし、難病が判明した。
もやもや病は若年性脳梗塞の原因のひとつといわれ、対策は重なる部分があるという。
「もやもや病は原因不明ながら内頚動脈が狭くなる病気で、症状は脳梗塞やTIAに似ています。年を重ねるごとに血管が狭くなり、血栓ができやすくなることから、若年性脳梗塞の原因のひとつといわれているのです。徳永さんが脳梗塞予防で手術を受けられたのは、妥当でしょう」
■症状が「片側」「突然」なら軽視禁物
那須も発症前は多忙だった。昨年12月に公表された「番組出演本数ランキング(ブレイクタレント)」は10位。その前の年から119本増の288本だった。そこにカウントされるのは、NHKと民放キー局の番組のみで、地方局やラジオ、インターネットなどは含まれていない。それらを含めると、半端ない忙しさだったといえる。
「若年性脳梗塞は、もやもや病のほかに血栓をできやすくする特殊な病気が関係していますが、いずれにしても発症前には徳永さんが経験したようなTIAが見られることが多いはずです。そのときに見落としてはいけない重要なサインが、『片側』のほか『突然』ということ。そして健康診断の結果を軽視しないことです。40代にもなれば、血液検査に異常が表れておかしくありませんが、無症状を理由に放置する人が少なくありません。それで睡眠を削って仕事を重ねると、40代でも体は悲鳴を上げるということです。突然、片側のマヒなどがあれば、循環器科や脳神経外科でそのことを伝えて検査を受けるべきでしょう」
たとえば、正座して足がしびれるのは当たり前だ。しかし、いつも通り座って仕事をしているときや同僚と立ち話をしているときに、ワケもなく片側だけしびれるのはおかしい。そんな原因が考えつかないようなしびれは要注意だという。
さらに心臓に原因がある場合もあるという。心臓は4つの部屋に分かれていて、上の2つの部屋を隔てる心房中隔に穴が開いていると、血栓が脳に流れ着いて脳の血管を詰まらせることが知られている。その穴は、胎児の成長には必要でだれでもあるが、成長につれて閉じる。それが成人になっても20~25%の割合で残っているという。
「心房中隔に穴があっても通常は問題ありませんが、それが原因で脳梗塞になった方はカテーテル手術で穴を塞ぐこともできます」
徳永や那須は不幸中の幸い、命に別条はなかったが、治療が遅れると取り返しがつかなかったり、一命は取り留めても重いマヒなどが残るリスクがある。桑島氏が指摘するように、たとえ一時的なマヒなどでも軽く考えない方がいいだろう。