肩の荷を一度下ろす「座禅」の妙…さながら旅の途中の休憩にも似たり
ゆっくりと息を吐き、吸うことに集中
稲田住職の指導に従い、持参した作務衣に着替えた本紙記者も教えられた通りに足を組み、手の形を作る。目は半眼、座布団から1.5メートル先辺りを見る。
「何も考えないというのは難しい。だから座禅では座布団の上で起こっていることを考えます。今も鳴っている空調の音や、自分自身についてなど、1つのことを考え終わったらそれをいったん脇に置き、次々に思いをめぐらしてもいい。ただ、他人や別の場所のことを考えると、心がそこに飛んでしまうので、これはいけません。あくまで『今、ここ、私』でものを考える。呼吸について考えるのもいいでしょう」
稲田住職の言葉に従い、ゆっくりと息を吐き、吸うことに集中。足が痛くなり、「しんどい」という思いも頭をよぎる。長いのか短いのかの感覚すら遠くなる10分超の座禅を2セット。額には汗が浮いていた。
ただ座り、呼吸をしていただけにもかかわらず、記者には不思議な充足感があった。
何がどう、と言葉にするのは難しい。例えるならば、旅の途中での一休みに似ている。まだ旅は続くし、相変わらず荷物は重い。それでも休憩することで、再び荷物を背負って歩き続ける思いを新たにする。
稲田住職は「それでいいんですよ」と、にこやかにほほ笑んだ。
●臨済宗妙心寺派東京禅センター
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