最悪レベルの「エンゲル係数」が高齢者の生活を圧迫…ますます広がる“老後不安”の深刻度
「現在の物価の上昇に対する認識は、政府・日銀と消費者の間で大きく乖離している。日銀は物価上昇率の目標を2%といいますが、現在の水準を分かっているのか。『物価と賃金の好循環を目指す』とする目標はむしろ悪循環に向かっている。物価高による消費者の生活負担圧迫は拡大しています」
■続く「負のスパイラル」
実質賃金は22年4月以降ボーナス時期(24年6.7月)を除いてマイナスが続いている。賃金が上がればコスト転嫁で物価も押しあげられ実質賃金はマイナスに動く、まさに負のスパイラルが続いているのである。
エンゲル係数の上昇は高齢化にも大きく影響している。勤労世帯は28%台だが、定年退職した無職世帯は30%を超えている。所得水準が低いため、生活に欠かせない食料品の支出割合が大きくなってくるのだ。特にコメをはじめとする食料品の高騰は高齢者の生活を圧迫する大きな要因になっているのである。
日本の個人金融資産は2179兆円(24年9月末)。60歳以上が6割を超えて所有している。現在の物価の上昇が今後も続けば、高齢者は貯蓄を取り崩して生活費に充てざるを得なくなる。高齢化社会で長生きするリスクを考えると、老後は貯蓄が減り、年金も減る不安を抱えたまま迎えることになる。物価対策の素早い実施が緊急の課題になっている。
(ジャーナリスト・木野活明)