赤羽「立ち飲みいこい」で、脳裏に蘇った子供の頃の“角打ち”の思い出
黙々とマイペースで飲む一人客がほとんど
アタシはまずホッピーから(430円)。ツマミは豪勢にマグロの脳天刺し(250円)。100円台のつまみが中心のこの店で250円は高級だ。練りわさびをたっぷり醤油に溶き、ビシャッとつけて口に放り込む。昭和食いだ。そこに濃いめのホッピー。サイコ~。
カウンターはほとんどが一人客。黙々とマイペースでやっている。みな酒場達人だ。後ろのテーブルには男女のグループが数組。そっちは比較的若く明るい雰囲気。カウンターの雰囲気とは一線を画す。平日昼のカウンターは多少の屈託を抱えているようだ。隣に来た地元の先輩らしき御仁はポッケから大量の小銭を出して容器にぶちまけると、「煮込みと日本酒の冷」。カウンターのお兄さんが小銭を数える。先輩はすぐに飲み干し、「おかわり!」。それも早々と飲み干し、さっさと帰って行った。さすが赤羽。凄腕の飲み手がいるものだとヘンなところに感心するアタシ。煮込みが110円だから、しめて610円。なんならワンカップ買って飲む方がいいのにと思うのは素人。やっぱり酒場で飲むのがいいんだよ。
アタシもつられて、「中身(220円)おかわりネ」。ついでにキス天(190円)。軽く塩振って熱々をバクリ。さっくりふっくらの食感はキス天ならでは。外が暗くなり、どっと客が増えてきた。
厨房で忙しく動き回る北爪店長を尻目に、アタシは屈託なく日本酒の冷を締めに追加し、キス天のしっぽをつまみにぐびり。酔いが回ると脳裏に、ぼんやりと子供の頃の酒屋のカウンターが蘇った。そういえばあの酒屋の薄暗い奥で飲んでいたのは、さっきの先輩みたいなオッサンばかりだったなぁ。アタシは缶詰の鯨の大和煮が無性に食いたくなったのでした。
(藤井優)
○立ち飲みいこい 北区赤羽1-3-8