東レ(上)素材産業を代表する科学メーカー “黒いダイヤ”をはじめ技術力はピカイチ
つまり、技術開発力はあるが商売下手、というのが東レの実情だ。例えば海水淡水化では、施設をつくるプラント会社は大きな利益を上げている。それに比べてキーデバイスをつくっている東レの儲けははるかに少ない。
もっとも東レは、これまで技術オリエンテッドであることを誇りにしていた。4代前の社長から前社長までの4人のうち、3人が技術系で、しかも大学院を出ていることも、それを裏付ける。
しかし、利益率が低くては研究開発費の捻出もむずかしくなる。それでは日進月歩の技術の進化に遅れてしまう。その危機感もあってか、今年春の社長交代は異色だった。新社長の大矢光雄氏は、これまで営業しか経験していない研究開発とは無縁の人材。なぜ、大矢氏が社長に選ばれたのか──。=つづく