南社長の期待にやっと応えられるか 阪神・伊藤隼太の正念場
「今の南さんは優勝争いより、後輩の活躍の方がうれしいんじゃないの」とは、ある阪神OBの弁だ。このOBが言う「南さん」とは、阪神の南信男球団社長。「後輩」とは、南社長の母校・慶大出身の伊藤隼太のこと。
11年ドラフト1位の伊藤は、昨年までの2年間は鳴かず飛ばず。「強打の外野手」も看板に偽りありと、ファンの目も厳しかった。
その伊藤は7月1日に今季初めて一軍登録されたものの、同月は11試合しか出番がなく、20打数5安打(打率.250)。7月下旬に大和が故障し、8月は中堅や右翼のスタメンで起用されている。
すると、人が変わったように打ち出し、この日も初回の2死二、三塁の好機に右前適時打を放ち、4試合連続安打。8月はここまで13試合で43打数17安打。4割近い打率(.395)を残している。
前出のOBが言う。
「伊藤はドラフト3位でも取れたのに、南さんの意向もあって1位の単独指名で獲得した経緯がある。昨年までは『外野のレギュラー取りは厳しい』との声も多かったが、昨秋から掛布が打撃指導ができる立場になり、秋季キャンプから面倒を見てスイングスピードがアップ。変化球にも対応できるようになってきたことが、今の数字につながっている。そもそも掛布を育成&打撃コーディネーターの肩書で25年ぶりに球団に戻したのは、南さんが伊藤の指導を同じ左打者の掛布に託す意味が大きかったともいわれている。この日は一軍に戻ってきた大和が足でアピールし、打撃不振の福留も二塁打を打った。今後は優勝争いも激化する。伊藤が外野のスタメン枠を取るには、起用された試合では必ずチームに貢献することが重要だ」
ファンや南社長の期待を裏切り続けてきた伊藤。チャンスをモノにできるか。