「来た球を打ってるだけ」 好調の西武・森に漂う“天才”の風格
かつての近鉄の主砲で「18歳の4番」と言われた西武元打撃コーチの土井正博氏は現役時代、巨人の長嶋茂雄氏に「打撃の極意」を聞いたことがある。長嶋は例の甲高い声でこう答えたという。
「来たボールをこう、バーンとね、バーンと打てばいいんだよ」
これには後に2000安打を打った土井氏も、「さすがに理解できなかった」と述懐している。
森の言葉はそんな「天才打者長嶋」を彷彿させる。森はスポーツ専門誌でこうも言っている。
「調子の良い時はバットにボールが吸い込まれていくような感覚はあります。ボールの軌道が見えるというか、その軌道上にバットの芯を持っていけば必ず打てるんです」
道具も選ばない。数本ある森のバットの重さは880~900グラムとまちまち。普段は880グラムのバットを使い、「軽すぎるな」と思った時は重いものを使う。ここでもフィーリング重視である。
この日は二軍のデーゲームで、公式戦今季初となる捕手出場。先発の(相内)誠をリードするも、5回7失点と炎上した。捕手のリードだけに責任があるわけではないといっても、試合前まで誠の二軍での防御率は1点台。バットは冴え渡っても、これでは正捕手の座は遠のくばかり。
野村克也元楽天監督は「天才打者は捕手に向かない。大成しない。なんでも打てるから、打者の嫌がるリードに思考がいかない」というのが持論。森は果たして……。