返事だけ「ハイ!」ってのが多い。来日して二十何年、日本人も変わってきてるのが分かるよ
「挨拶でも何でも、そういうこと、上の人がうるさく言わないと、うまくいかないよ。私には弟と妹がいたから、そういう感覚で話してる。難しくないよ」
新弟子探しには「苦労してる」という。
「私は外国人だからパイプがない。ハワイの子は1人しか取れないからね(外国人枠は各部屋1人だけ)。ずっとアウェーだよ。誰も知らないんだから、ずっと頭下げてる。誰かにお願いして、お願いして、今、パイプつくってるところ。
昔出会った人に『いい子、いるよ』と教えてもらって……ということもあるよ。話は、いつか回ってくる。だから今、お願いして回って、とりあえず話だけはしてくる。種まいてる。行くしかない。行かなかったら来ない」
明日は、そんな武蔵川親方が日本にやってきたときの話を聞く。(つづく)
取材・構成=ノンフィクションライター・渡辺勘郎
▽武蔵丸光洋(むさしまる・こうよう) 1971年5月2日、米国領サモアで生まれ、ハワイで育つ。高校卒業後に武蔵川部屋に入門し、89年秋場所で初土俵。91年名古屋場所新十両、同年九州場所新入幕。99年名古屋場所で第67代の横綱に昇進した。55場所連続勝ち越し記録は歴代1位。03年九州場所後に引退。優勝12回。通算779勝294敗115休。96年1月に日本国籍取得。現在は武蔵川親方として後進の指導に当たっている。