契約交渉「一発サイン」 実は“一発”のケースは少ない?
■西武は「ガチンコ契約」で苦労した
もっとも、こうした「演出」をしない球団もあります。ボクが所属していたころの西武がそうでした。当時の西武は「ガチンコ契約」。下交渉を一切行わなわず、初交渉の席で、初めて球団側から来季年俸額を提示されました。
当然、選手の希望額と球団提示額には差が出やすいうえ、球団側からシーズン1試合ごとの活躍度が得点化された資料を見せられるのですが、これが複雑で。
いつどんな安打、好守をしたかなんて、ほとんど覚えていません。必然的に選手は「資料を精査させてください」となり、保留の流れを余儀なくされます。その結果、他球団の選手に比べて西武選手は交渉の事情を知らないファンや周囲から「カネに執着しすぎ」と白い目で見られることが多かった気がします。
特にボクはルーキー1年目の契約交渉から保留したこともあって、球団フロント、ファンから「生意気」「強欲」と罵られたものです(苦笑)。
当時、チームの指揮を執っていた伊東監督(現ロッテ監督)や同僚は、チームの交渉事情を知っていたので、「本来、交渉というのはウチ(西武)のやり方が普通なんだから。よく球団と張り合った」と褒めてくれましたが、周囲の目は最後まで冷たかった。