【藤江直人特別寄稿】なでしこJ高倉麻子新監督の“正体”
その中にスポーツ紙でサッカー担当を務め、高校時代はサッカー部所属だった筆者もいた。
記録に残っていない試合は、果たして送り出す側の私たちが先制してしまう。当然、女子選手の目の色が変わった。私たちがCKを獲得。ゴール前へ上がった筆者にマークがついた瞬間だった。
「そんなチビ、放っておけ!」
怒声の主は当時23歳の高倉監督だったと記憶している。筆者の身長は、160センチ。ご指摘の通りだが、あまりの剣幕に驚いたことを今でも覚えている。ちなみに試合は、先制されて闘志に火がついた女子代表が5ゴールを奪って逆転勝ちした。
ともあれ、壮行試合の相手がスポーツ紙記者の寄せ集めという冬の時代を経験し、夢を託した後輩が大輪の花を咲かせてくれたからこそ、高倉監督は「バトンがまた戻ってきたら受け取ろう」と心に決めていたという。
今回、選手選考の4カ条として①テクニックがあってクレバー②走れる③チームのために戦える④代表への思いが強い――を掲げた48歳の指揮官は、これから勝利と世代交代という“二兎を追いながら”戦っていく。