全勝の稀勢の里 白鵬黒星で“早すぎる単独トップ”の不安
この日の一番が今場所の明暗を分けることになりそうだ。
初日から全勝の稀勢の里(30)は隠岐の海を逆転の突き落としで破り、8連勝。波乱が起きたのはその直後だ。同じく負けなしの白鵬(31)が、初顔合わせの荒鷲に敗れる波乱。立ち合いから荒鷲の速攻になすすべもなく、モンゴルの後輩に土をつけられたのだ。
単独トップが転がり込んできた稀勢の里だが、手放しで喜んでいいものか。プレッシャーに負けて初優勝や綱とりを何度も逃してきた過去があるだけに、単独トップは足かせになりかねないというのだ。
相撲評論家の中澤潔氏は「稀勢の里だけは、すべてが終わってみないと信用できませんから」と、苦笑いしてこう話す。
「昨年の3月場所も初日から10連勝しながら、バタバタと負けて優勝を逃した。先場所も3横綱を破りながら、平幕の栃ノ心に屈した。確かに今場所は落ち着いて相撲を取っている。この日のように不利な体勢から勝ちを拾う相撲が目立つが、余裕があるからこそ、回り込んで逆転の一手を出すことが出来るとも言える。これは今までの稀勢の里にはなかったもの。欲をかくのではなく、開き直って一番一番集中しているように見える。それだけに優勝が頭をよぎった時も同じように平静でいられるのか、非常に心配なんです」