メダル危うい高梨沙羅に味方か 平昌に吹く気まぐれな強風
災いが福を呼ぶこともある。
9日開幕の平昌五輪。開会式(20時開始)の予想気温はマイナス5度以下で、風が吹けば体感温度はマイナス15度以下になるともいわれている。
屋根のない会場に集う観客たちの健康問題が日本国内でも話題になっているが、そもそも平昌は太白山脈から吹き下ろす、冷たい強風が名物。その風を利用して作るスケトウダラの干物(ファンテ)は現地の特産物だ。
強い風は当然、アルペンやクロカン、スノボーなど、屋外競技への影響は避けられない。中でも最も影響を受けるのは、時速90キロ前後のスピードで空中に飛び出すジャンプだろう。しかも、標高700メートルの山間地の頂に造られた平昌のジャンプ台は「世界で最も危険」ともっぱらだ。
昨年2月、女子W杯を現地取材したある記者が言う。
「ここのジャンプ台は世界で一番変則かつ危険といっても過言ではない。どこの会場も風向きや強さはある程度変化しますが、平昌のジャンプ台は防風幕はあっても、風が下から吹き上げたり、横から吹いたり、急に止まったり、巻いたりと変化が激しく、なおかつ強い。過去には突風でバランスを崩し、転倒した選手もいるし、韓国の男子選手でさえあまりに危険なのでここでの練習を控えていたと聞きました」
とはいえ、今季一度も優勝がない高梨沙羅(21)にとっては、この悪条件は必ずしもマイナスではないだろう。実力ではかなわないルンビ(今季7勝)やアルトハウス(同2勝)も、気まぐれな強風に翻弄されたら得点が伸びないこともある。勝利の女神から見放されている高梨にもつけ入る隙はある。