中日・森監督にズバリ聞いた 松坂大輔をなぜ獲得したのか
沖縄では「松坂フィーバー」が続いている。松坂大輔(37)がテスト入団した中日のキャンプ地は大繁盛。第1クールの5日間でグッズ売上は1000万円を突破した(他選手のグッズも含む総額)。松坂の年俸は1500万円。球界関係者の間では、「もう元は取った。これが獲得の狙いだったんだろう。客寄せパンダの役目は果たした」と厳しい声も飛ぶが、松坂獲得の目的は本当にそうなのか。森繁和監督(63)に聞いた。
■「パンダだって来ればみんな見に行くわけで」
――改めて松坂獲得の狙いは。
「よそのチーム(ソフトバンク)で3年間勝てなくてああいう形で自由契約になった。オレとすれば『まだ使えるかな、どうかな』というのは気にはなる。ただ、それ以上に、もしかしたら他にも役に立つ方法があるのかな、と考えた。ソフトバンクがあれだけカネを使ってダメだった。うちはそんなカネなんか出さない。その中で本人も『お金の問題じゃない』というのがあったから」
――「他に役立つ方法」とは?
「うちには若いのが多い。優勝経験がある選手は何人かしかいない。そういう若い選手を(松坂が)サポートできるかもしれない。もちろん、本人が一軍で1試合でも多く投げて、1勝でもできればいい。それと、名古屋という土地柄でね、『外様』だからキツイことを言われる可能性も十分にあるけど、それ以上にマスコミを惹きつけるものが今のうちの連中にはない。松坂は特別なものを持ってる。我々60歳を過ぎた人でも『松坂』と言えばみんな知っている。10代の人でも『松坂』という名前は知っている。あいつにはそれだけ、人を動かす可能性を持っているということ」
――少なくともこのキャンプでは、話題を集めるというその役割は果たしている。
「ソフトバンクみたいに強いチームだから目立たないだけで、これが弱い……優勝争いしないチームだと、来ただけでこれだけマスコミが騒ぐ。ドラフト1位のとんでもない新人が入ってきたような状態。みんなが松坂を追いかけて、(投げ終わるとブルペンから報道陣がいなくなり)他の選手が『あれ、みんないなくなっちゃったよ』と。『今までの自分は何だったの』と。そういうことを思ってくれたらいい。悔しいなら抜かしてみなさいよと。引退をかけた37歳にマスコミがゾロゾロついて行って、大野(雄大)はまだブルペンでピッチングしているのに、誰もいない。自分のことも見てよと思うなら、自分で何とかしろよと。それには結果を出すしかないんだから」
――それが松坂獲得の一番の狙い?
「球団も“そういうこと考えてもいいんじゃないか”と思うなら、『オレは取りますよ』と。(球団は)『分かりました』、そんな感じだったけど、いざ来てみて(人気と注目度に)ここまでですかって。松坂にはもちろん、ユニホームを着て頑張ってもらいたい。別に『客寄せパンダ』じゃないけど、パンダだって来ればみんな見に行くわけで、何回見に来るかは別問題にして、それだけの影響があると思って獲得した」
■「先発は1カ月に1回でもいい」
――とはいえ、松坂が活躍できなければ、森監督に批判がくる。
「ダメならもちろん責任はオレがとればいい。こんな簡単なことはない。オレは一緒に(西武)ライオンズでやったこともあって、正直、あいつの気持ちをスッキリさせてやりたいという意味もある。『やることやりました、引退します』というのであれば、引退試合を中日でやってあげてもいいと思っている。まずは自分が納得すること。まだやりたいというのであれば、球団がOKさえしてくれれば(来季以降も)やって欲しい。そのとき球団から『もう1年やらせてもいいんじゃないか』という声が出るようにしてあげるのも、ひとつの方法だと思っている」
――来年以降も現役を続ける可能性があると。
「これからバッティングピッチャーで投げたり、オープン戦で投げたりしてどうなるか。楽しみ。ダメだったらまた初めからやり直せばいい。まだまだ先は長いんだから」
――松坂に優先的にチャンスを与えるとすれば、若手の出場機会が奪われる。
「(ポジションの)確約なんてものはない。使えるのであれば使う。ただし、チャンスはやるよ。うちの去年の投手陣の成績を見れば、先発ピッチャーの頭数が足りないことは事実。その中で松坂が10日に1回、20日に1回、1カ月に1回でもいいから、投げられれば。勝つか負けるかは別問題にして、それだけチャンスを与えてもいいような選手であれば、投げさせますよ。一発で(チャンスを)つかんじゃうかも分からないし。(昨季まで)若い連中にもチャンスはやった。チャンスをつかんだのも何人かはいた。いいピッチングをしたから、次またもう一回というのは何人かいたけど“モノにする”というところまでは、そう簡単にいかない。それなら、1人でも多く先発できる可能性のある人を取ってもいいのかなと。同じ力だったら若い奴を使う。でも、そこに追いついてくれる若い選手がどれだけいるのかと考えると、松坂が1カ月に1回でも投げられるなら。吉見にしても山井にしても、同年代が必死に頑張っているからね」
(聞き手=中西悠子・日刊ゲンダイ)