バド選手移籍めぐり紛糾…実業団スポーツの悪しき“足かせ”
移籍の自由を認めれば、「カネによる引き抜きが横行する」と、懸念する関係者もいる。ならば、金銭授受にこそ厳しい規制を設けるべきで、陸上選手の移籍、つまりは「転職」の自由を奪うことは、雇用主から逃れられない、かつての年季奉公人と同じではないか。
陸上ジャーナリストの菅原勲氏もこう語る。
「2020年に五輪を開催する国で、こんな取り決めや規定があるのは世界の笑いものです。例えば、実業団の陸上は会社の宣伝になる駅伝がメインになっている。陸上部は選手ではなく、会社ファーストだから、こんな島国根性の決まりが撤廃されない。近年は陸上選手のあり方も大きく変わった。市民ランナーで世界中を転戦する川内優輝がプロになったり、トラックからマラソンに転向した大迫傑は実業団を辞めて海外のプロチームでレベルアップした。短距離選手のサニブラウン(・アブデル・ハキーム)は米国の(フロリダ)大学から東京五輪を目指す。選手も日々成長している。入社した会社のチームでじっとしていられなくなる者は必ず出てくる。それを企業の論理や指導者の好き嫌いで能力のある選手を飼い殺しにすることは、陸上界にとっては大きな損失。移籍を希望するバドミントン選手の大会出場を制限するのも同じことです」
日本のマラソンが低迷しているのは、こんなところにも原因があるのかもしれない。